家の購入が家計に与える影響を簿記的に検証してみた!

 家を購入することが家計にどのような影響を与えるのかいついてを、簿記的に検証してみました。下記の金額は概ね全国の平均額を用いているため、ある程度現実的な数字を示しておりますが、当該試算はあくまでひとつの可能性を示したものにすぎませんので、あらかじめご了承ください。

 

1.前提条件(金額はそれぞれ概ね全国平均額)

・年収は400万円

・貯金(現金)は1000万円

・家の購入額は4000万円

・購入のための頭金は10%の400万円

・資産は貯金以外に車100万円

(注1)上記の金額はあくまで概数です

(注2)住宅ローンは35年間1%固定金利で購入

(注3)購入前後で家計支出額に変化はなし(借入元金を除く)と前提

 

2.住宅購入直前の貸借対照表と分析指標

現金1000万円 流動負債 360万円 ※1年間の家計支出総額

車両 100万円 固定負債   0万円

         純資産  740万円 ※純資産=資産ー負債

 

※総資本1100万円

※年収400万円-支出360万円=年間現金増加額40万円

 

当座比率 277%(現金1000万円÷流動負債360万円)

固定比率  13%(固定資産100万円÷純資産740万円)

自己資本比率67%(純資産740万円÷総資本1100万円)

 

3.住宅購入直前の分析評価

・短期的な支払能力を評価する当座比率はとても健全

・長期的な支払能力を評価する固定比率はとても健全

・調達資金の安定性を評価する自己資本比率はとても健全

【総評】すべてにおいて健全

 

4.住宅購入直後の貸借対照表(2の状態のまま購入)

現金  600万円 流動負債 446万円(+返済元金1年以内86)

車両  100万円 固定負債3514万円(+返済元金1年超部分)

不動産4000万円 純資産  740万円

 

※固定資産=車両100万円+不動産4000万円=4100万円

※総資本4700万円

※住宅ローン年間支払内訳:元金86万円、利息34万円

 

当座比率 134%(現金600万円÷流動負債446万円)

固定比率 554%(固定資産4100万円÷純資産740万円)

自己資本比率15%(純資産740万円÷総資本4700万円)

 

5.住宅購入直後の分析評価

・短期的な支払能力を評価する当座比率は健全

・長期的な支払能力を評価する固定比率は極めて不健全

・調達資金の安定性を評価する自己資本比率は不健全

【総評】当面の支払いには問題はないものの、長期的には問題になる状態

 

6.住宅購入5年後の貸借対照表

現金  370万円 流動負債 446万円(+返済元金1年以内86)

車両  100万円 固定負債3084万円(+返済元金1年超部分)

不動産4000万円 純資産  940万円

 

※車両と不動産(建物)の減価償却は便宜上無視

※借入元金は1年目と同じ86万円の返済が5年間継続している仮定

※総資本は4470万円

 

当座比率  83%(現金370万円÷流動負債446万円)

固定比率 436%(固定資産4100万円÷純資産940万円)

自己資本比率21%(純資産740万円÷総資本4470万円)

 

7.住宅購入5年後の分析評価

・短期的な支払能力を評価する当座比率は不健全

・長期的な支払能力を評価する固定比率は極めて不健全

・調達資金の安定性を評価する自己資本比率は不健全

【総評】当面の支払能力、長期的な支払能力いずれも不健全で、調達資金の安定性は一定程度改善はされていますが、なお不健全な状態となっており、現状のままではいずれ家計が破綻(試算上はこれより約8年後に破綻)することになります。

決算書と財務諸表の違い

決算書という用語は簿記(企業会計基準、企業会計原則)でも法律でもでてきません。貸借対照表損益計算書を含む書類のことを財務諸表または計算書類と呼称するのが正式です。

 

企業会計基準・概念フレームワーク1項(企業会計基準委員会)

『・・・貸借対照表損益計算書キャッシュ・フロー計算書等の財務諸表が開示されている。』

 

企業会計原則一般原則・明瞭性の原則

企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。』

 

会社法第四百三十五条

『株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類貸借対照表損益計算書・・・。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。』

 

金融商品取引法第七十九条の七十

『・・・決算報告書(以下この条において「財務諸表等」という。)を・・・』

 

法人税法第百四十四条の六

『・・・当該事業年度の貸借対照表損益計算書その他の財務省令で定める書類を添付・・・』

法人税法(第七十四条)では株主総会又は社員総会の承認を受けた決算に基づいて申告すること(確定決算主義といいます)を求めていますので、法人税法上は計算書類、財務諸表という用語を用いてはいませんが、会社法に準じているという認識でいいのかと思います。

固定資産割賦購入仕訳のなぜ?(簿記2級)

【課題】簿記2級の出題範囲になっている車両の割賦購入の仕訳問題で、何故借方に前払利息(前払費用、長期前払費用)と仕訳するのかを疑問に思う方がいらっしゃるようなので解説してきます。

 

【仕訳例】※ここでは勘定科目の長短は省略します。

仕訳例1

車両運搬具  4,800,000 未  払  金 6,000,000

前払利息   1,200,000

仕訳例2

車両運搬具  4,800,000 営業外支払手形 6,000,000

前払利息   1,200,000

 

なぜ利息相当額を資産計上するのか?

問題文で利息相当額は資産勘定で処理することが指示されていることもありますが、そもそも車両を購入した時点で分割払い代金¥6,000,000は支払う義務が生じています。

うち¥1,200,000の利息相当額も支払う必要があり、それでいて購入時点では未経過ですので、経過勘定項目として前払利息(前払費用)として仕訳する必要があります。

次のよう段階的に考えるとわかりやすいでしょう。

車両運搬具  4,800,000 未 払 金  6,000,000

支払利息   1,200,000

このうち購入時点では利息相当額¥1,200,000全額が未経過利息(経過勘定項目)ですので次のように修正する必要があります。

前払利息   1,200,000 支払利息   1,200,000

以上2つの仕訳をひとつにまとめると次のようになります。

車両運搬具  4,800,000 未 払 金  6,000,000

支払利息   1,200,000

前払利息   1,200,000 支払利息   1,200,000

 

なぜ利息の未払額は未払利息(未払費用)ではないのか?

購入時点の仕訳として次のような仕訳も考えられます。

車両運搬具  4,800,000 未 払 金  4,800,000

前払利息   1,200,000 未払利息   1,200,000

未払利息(負債)は支払利息の経過勘定項目です。つまり利息相当額のうち経過した利息相当額を計上する勘定科目になります。しかし購入時点では経過した利息はありませんので、未払利息(経過勘定項目)で仕訳することはできませんし、そもそも未払金¥6,000,000は割賦払い代金の未払額を仕訳した勘定科目です。

 

【第22問】原価の基礎的分類<2級建設業経理士>(twitter投稿再編集)

問題文の構成は、 「簿記について理解を深める解説」 を冒頭に、それに関連する 「問題文」 と続き、最期に 「<>の部分に主にヒント」 を記述してあります。

【問題】原価の基礎的分類基準は ①発生形態別分類(物と人と他) ②作業機能別分類(原価が使われる機能で分類) ③計算対象との関連性分類(直接費と間接費) ④操業度との関連性分類(変動費と固定費)に分類されます。ではこのうち①と関係の深い事柄はどれか?<2級建設業経理士の出題範囲>

1.建設工事原価は工事直接費と工事間接費に分類される

2.建設業は材料費・労務費・外注費・経費の4分類法採用

3.直接原価計算は活動量に比例する費用の区分が不可欠

4.多くの建設業で工事原価を工種別に把握することが有益

 

【解答・解説】発生形態別分類でいう物は材料費を、人とは労務費を、その他とは経費を指します。ただし建設業の場合は原価に占める外注費の割合が高いため、経費から独立して分類することとなっています。したがって『建設業は材料費・労務費・外注費・経費の4分類法採用』が正解になります。

【第21問】原価計算<2級建設業経理士>(twitter投稿再編集)

問題文の構成は、 「簿記について理解を深める解説」 を冒頭に、それに関連する 「問題文」 と続き、最期に 「<>の部分に主にヒント」 を記述してあります。

【問題】原価計算には、個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算などがあります。では、前述した3つの原価計算に当てはまらないものは次のうちはどれか?

<2級建設業経理士の出題範囲で、下記の4つの記述のうち、前述した原価計算にそれぞれひとつは当てはまり、ひとつだけ当てはまりません>

1.見込量産している鉄筋工場の原価計算

2.建設業は工事原価を材料費、労務費、外注費、経費分類

3.建設業や造船業では原則として工事別に原価を集計する

4.コストコトロールのための能率水準の目標を定める

 

【解答・解説】見込量産している鉄筋工場の原価計算は、見込生産していることから総合原価計算に該当し、 建設業や造船業では原則として工事別に原価を集計するとは、個別原価計算に該当し、 コストコトロールのための能率水準の目標を定めるとは、目標に向かって原価低減が目的ですので標準原価計算に該当します。建設業は工事原価を材料費、労務費、外注費、経費分類する原価計算の方法を形態別原価計算といいます。

【仕訳問題】固定資産の割賦購入(簿記2級)

【問題】22年4月1日に以下の条件で車両を割賦購入した。取得時の仕訳を示しなさい。

・60回分割払いで毎月(月末)に¥100,000を支払う

・現金販売価額は¥4,800,000

・利息相当分については資産勘定で処理し、支払時に定額法により費用計上する

・勘定科目に長短の別は不要とする

 

【解答】

22年4月1日(取得時の仕訳)

車両運搬具  4,800,000 未 払 金 6,000,000

前払利息   1,200,000

 

【解説】長期分割払いで資産を割賦購入した場合、現金販売価額に加え利息を支払う必要があります。

車両運搬具・・・車両が増加していますので資産の増加(借方)

前払利息・・・・支払う約束をした利息相当額の未経過利息

分割払い期間に支払う約束をした利息相当額の経過勘定項目

前払利息は勘定科目ですので、貸借対照表を作成するときには前払費用になります

未払金・・・・・割賦払いの総額

 

2期比較資金流動分析<コスモエネルギーホールディングス㈱22.09>

評価対象企業 コスモエネルギーホールディングス株式会社

評価対象決算 2022.09中間期

 

決算概要

売上高約1兆3715億円と前年同期比増収(前期約1兆956億円)で、営業利益1728億円(前期約933億円)、経常利益1738億円(前期約949億円)と増収増益となっています。

 

2期比較資金流動分析

同社は前年同期比で約4590億円総資本を増加させています。

前期比の資金の動きは流動資産を約4885億円増加させており、当該資金は固定資産約294億円の減少(*)、繰延資産約1億円の減少(*)、負債約2847億円の増加、純資産約1743億円の増加が源泉になっています。

以上の結果、対前年同期比で、流動比率自己資本比率が改善されるなど貸借対照表は全体的には健全化されています。

なお資金流動分析とは直接関係ないものの、使用総資本の増加によってもなお利益率は大幅の増加していることも付記しておきます。

*固定資産及び繰延資産の流動化のことです。

※以上はあくまで資金流動分析上の評価です。

2期比較資金流動分析<日本製紙㈱>

評価対象企業 日本製紙株式会社

評価対象決算 2022.09中間期

 

決算概要

売上高約5500億円と前年同期比増収(前期約5000億円)であったものの、当期純利益は約220億円のマイナスと前期比減益(前期約21億円のプラス)となっています。しかし同社の総資本は1兆7000億円であり、半期で220億円の損失はそれほど大きな金額ではありません。

 

2期比較資金流動分析

同社は前年同期比で1446億円総資本を増加させており、うち自己資本は316億円となっています。調達した資金のうち934億円は流動資産に、512億円は固定資産に投下されており、わずかながらではあるものの、運用資金が固定化しています。

しかし一方で、当座比率流動比率も前年同期比でわずかに改善しています。

ただ、同社の総資本は1兆7000億円であることを考えると、それほど大きな問題ではありません。

※以上はあくまで資金流動分析上の評価です。

 

収益性の問題

2期比較資金流動分析と直接的には関係ないものの、同社は2020年9月中間期と2022年9月中間期のいずれでも、経常損失、当期純損失となっており、また、2022年9月期は営業損失を計上していることから、収益性は脆弱となっています。

 

3期比較決算書<コスモエネルギーホールディングス㈱22.09中間>

比較決算書<コスモエネルギーホールディングス株式会社>

・3期比較決算書<中間決算>※同社決算単信より要約

・分析しやすいように流動資産当座資産棚卸資産、その他の流動資産に分類

 

 

3期比較決算書<日本製紙㈱22.09中間>

比較決算書<日本製紙株式会社>

・3期比較決算書<中間決算>※同社決算単信より要約

・分析しやすいように流動資産当座資産棚卸資産、その他の流動資産に分類